偽りの先生、幾千の涙
気付けば空が明るくなっていた。
山の影で周りは暗いが、空は白い。
白さはどんどん増していき、やがてほんのりと水色が混じってくる。
「優さん、約束してください。」
榎本果穂が窓越しに空を見上げながら言う。
「私、生きようと思います。
優さんが延ばしてくださった命ですから。
でも、優さんもちゃんと生きて下さい。
約束です。」
彼女らしい言葉だった。
凜として力強い。
なのに何処か儚げで、それこそ俺がちゃんと見てないと何処かに飛ばされてしまいそうだ。
「分かった。
約束する。」
俺はにこやかに嘘を吐く。
今ここで死にたいと思わない。
簡単にくたばるのは癪に障るし、面白くない。
でも、約束なんて簡単に結べないよ。
もし、君が…