偽りの先生、幾千の涙


両親が忙しくて1週間ぐらい家に帰ってこないなんて、よくある事だ。


だけど、今回は悠長な事を言ってられる状況じゃなくて、あたしは焦っていく。


果穂ちゃん、今頃どうしてるんだろう?


伊藤先生と一緒にいるのかな?


…まだ、生きてるよね。


大丈夫だよね?


あたしは不安な気持ちを少しも解決出来ないまま、とうとう学校に行く日を迎えた。


午前中は今回の事件の説明会だった。


といっても、ニュースで聞いている以上の情報は聞けなかったし、果穂ちゃんについても、伊藤先生についても、現在調査中という言葉で終わってしまう。


午後のホームルームも同じだった。


休み時間は果穂ちゃんの話題で持ちきりだった。


「国木田さん、お父様やお母様から何か聞いてない?」


「知ってる事あったら教えて。」


「果穂様、本当に誘拐されたの?」


全ての質問があたしのところに飛んできた。


あたしは全ての質問に答えられなくて、皆が失望していく。


視線が冷たくて、痛い。


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