偽りの先生、幾千の涙


あたしは自分の弱さを実感する。


逃げる事しか出来ない自分が情けなくて、腹立たしいと思った。


一人じゃ何も出来ないどころか、耐える事さえ出来なかった。


こんなの駄目だと分かっているし、この先どうしたらいいかも理解している。


だが、あたしが教室に戻ろうとしたのは逃げてから2時間以上経った頃だ。


流石に戻らなきゃって決心がついて、中庭を通って移動する。


でもそこでも進めなくなってしまった。


草の上に、見覚えのある鞄が落ちてある。


葉っぱや土が付着したそれは、朝と違って汚ならしい。


あたしはそれを拾ってから、教室の方を見上げた。


こっちを見て笑っている人はいなくて、というか誰もこちらを見ていない。


あたしは鞄を持って、また逃げた。


今度は学校から逃げた。


靴を履き替えて、昼下がりの校舎から離れる。


こんな日に危ないとは思ったけど、ここに留まるよりずっとマシだと思った。


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