偽りの先生、幾千の涙
外に出たのはいいものの、あたしは何処に行けばいいのか分からなかった。
電車やバスで帰った事はない。
というか、市バスってものに乗った事がない。
電車は予備校に行く時に乗った事あるけど…
今から家に電話したら…変に心配されちゃうし…
漠然とした不安に支配されながら、あたしは道を真っすぐ歩く。
とりあえず、公共交通機関を使える場所に行った方がいいと考えていたが…
「痛っ!」
段差に躓いた。
しかもちょっとボコボコした石造りっぽい道で、膝から血が出ている。
左手の掌も血だらけ、右手は鞄の犠牲のおかげで無事だけど…
手を差し伸べてくれる人は誰もいないから、自分で立ち上がった。
足が痛いのは無視しようと思って、前を向いた。
そうしたら…
「大丈夫?」
いつか会った人がそこにはいた。
「…貴久君?」
「あ!
俺のこと覚えててくれたの?
嬉しいな。」
貴久君はニコッと笑うと、あたしに足元を見る。