偽りの先生、幾千の涙
男の人に手を引っ張られて、あたし達はエレベーターに乗る。
男の人は勝手に2階を押していた。
「…何処行くんですか?」
下手したら誘拐なんだけどな。
そんな事を考えながら聞くと、堂々とした答えが返ってくる。
「俺の家。」
やっぱり誘拐犯だ。
「あの…服で分かりませんか?
私、女子高生なんですけど。
水仙女子学院高等学校って知りませんか?
って聞いてますか?」
質問には答えてもらえないまま、2階に着く。
未だに手首を捕まれたまま、グイグイと引っ張られる。
廊下を進むと、男の人は奥の方の部屋の前で止まった。
あたしの手を掴んでいない方の手でポケットから鍵を出すと、すぐにドアを開けて家の中に入る。
私の場合は、連れ込まれるという表現の方がしっくりくるのだけれど。