偽りの先生、幾千の涙
だが俺もここで引き下がるわけにはいかない。
とりあえず、あいつと喋る機会が欲しい。
何か良い方法…あるじゃん。
すげー手間はかかるけど、教員という立場をフル活用した手が。
俺は自然とニコニコ笑えた。
そうだ、どころか今がチャンスと言っても過言ではない。
思い立ったが吉日、俺は朝のホームルームで早速宣言したのだ。
「正規の面談はまだですが、非正規の個人面談をやりたいと思う。」
俺が笑顔で言うと、女子生徒も笑顔になる。
思春期の女の子って感じがする。
こういう時、顔が良くて本当に良かったと思う。
残念な顔なら、残念な反応しか返ってこないし、下手したら企画自体が出来ずに終わる。
だけれども、肝心の榎本果穂は笑っていない。
個人面談って何するんだろうって優等生面をしている。
今までの言動から察するに、心の中では迷惑がっているに違いない。
でも、何を考えようと決定は決定だ。
他の子達が喜んで受け入れる面談を、1人反対するような事は優等生さんには出来ないからだ。