偽りの先生、幾千の涙


案の定、2人は何の意見も言わずにこの日程を受け入れた。


あとは金曜日を待つだけだった。


楽しみにしている事がなかなか来ないというが、金曜日はわりとすぐにやって来た。


楽しみっていうわではないからだろう。


その日は少し暑かった。


太陽が燦々と降り注ぐ学校で、そろそろ夏服を着たいという声があちこちから聞こえる。


この学校は5月から夏服を着用する事が出来るから、今日1日は我慢しないといけないらしい。


対する教員達も、生徒が暑がっているのに自分だけ涼しくなれないという理由で、半袖着用はおろか、ジャケットさえ脱げない。


そういう風習は嫌になるが、こんな天候だって、見方次第でプラス要因になる。


普段はやってはいけない事は秘密に繋がる。


秘密は互いの距離を縮める事が出来る、画期的なアイテムだ。


「じゃあ、今日の面談は榎本さんと国木田さんだから、忘れないように。
補講がある子は頑張ってね。
はい、学級委員さんは号令お願いします。」


「…起立!」


榎本果穂のよく通る声が教室に響き渡り、皆がきちんと立つ。


「礼!」


「ありがとうございました!」


声の揃った挨拶に、ニコッと笑うと彼女達もニコッと笑う。


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