偽りの先生、幾千の涙
面談の準備があると言い訳をして、その日は早々に職員室に戻る。
面談は教室でも生徒指導室でもなく、使っていない応接室を借りた。
教室は補講で使うし、生徒指導室は狭くて暗い。
と、学年主任には説明している。
使っていない応接室は、少し奥まったところにあって、話を聞かれる心配がないからだ。
しかも20分過ぎてもバレにくいし、念のため掛け時計も外しておけば完璧だ。
使っていないし、掃除もついでにしておくと言えば、学年主任は快諾した。
俺は荷物を置いて、表向きの生徒の情報が載っているファイルと、裏向きの情報が入った情報端末だけを持って応接室に行く。
古びた部屋の電気のスイッチを付けると、何回か点滅した後に、オレンジ色の光が室内を照らす。
持ってきたものをテーブルの上に置き、ソファに座ると、腕時計で時間を確認する。
最初の面談者、国木田花音が来るまではあと20分程ある。
俺は裏向きの情報を確認する。
国木田花音、父親は警察庁のお偉いさんで、母親はやり手の弁護士。
母親は20年程前から顧問弁護士として榎本家と関わりを持っていて、国木田花音と榎本果穂は幼少期からの知り合いだ。
小学校から水仙女子学院に通っている生粋のお嬢様で…小学校の時は虐められている。