偽りの先生、幾千の涙
原因は不明だが、しっかりした印象の子ではないから、"選ばれてしまった"のだろう。
だが幸いにも、被害は大きくならずに済んでいる。
虐められ始めたのは、小学6年生の3学期だ。
無視されたり、陰口を言われたりする、仲間外れタイプで、物理的な虐めには至っていない。
そこまで行かなかったのは、中学の時に榎本果穂が入学してきたからだ。
小学校から上がってきた子も、中学から入ってきた子も両方混じっているクラスで2人は再会した。
仲間外れにされている国木田花音にとって、この時点で友達と呼べるのは、幼少からの知り合いである榎本果穂だけだった。
榎本果穂も国木田花音を見放さなかった。
榎本果穂の人気が高まると共に、一緒にいる国木田花音への虐めは消えた。
推測するに、榎本果穂と最も仲が良い子と認識されたのだろう。
国木田花音は今も平和な学園生活を送っているし、無視したりしていた生徒とも良好な関係を築いている。
あとは…ドジなのは本人も気にしているようだが、他に困っている事はなさそうだ。
兄が2人いるから、親からのプレッシャーはほぼなく、だからといって愛情を受けていないわけではない。
家庭環境は良好で、温室育ちの令嬢だ。
羨ましい限りだ。
でもだからこそ、人生の唯一の傷を治してくれた榎本果穂には絶対的な信頼を置いている。