偽りの先生、幾千の涙


じっくりと国木田花音の目の奥を覗く。


綺麗な色だ、少なくともさっきの進路の話に嘘はない。


今からの大事な話にどれだけ答えてくれるか分からないけど、これだけ綺麗な目なら、嘘を吐いた瞬間に分かる。


きっとこの瞳が濁るから。


「ちょっとプライベートな話になるけど、国木田さんが一番仲良い子って誰?
やっぱり榎本さん?」


優しく聞くと、国木田さんはまた頷く。


「私はそう思ってます。
榎本さんといる時が一番楽しいです。」


期待通りの答えに満足して、次に進める。


「いつも一緒だもんね。
榎本さん、凄いよね。
皆に優しいし、頭良いだけじゃなくて何でも出来るし、真面目でしっかりしてる。
学級委員も押し付ける形になったけど、嫌な顔一つしないでちゃんとやって、生徒だけど、尊敬出来る部分多いよ。」


国木田花音の大好きな”優等生の果穂ちゃん”を褒めちぎる。


国木田花音は子犬のような笑顔で身を乗り出す。


「そうなんです!
あたし、ドジでとろくて、全然良いところないんですけど、そんなあたしにも果穂ちゃんは優しいんです!
困ってたら助けてくれるし、アドバイスくれて、出来るまで待ってくれるんですよ。
そんな子、学校中で榎本さんだけなんです。」


他人を褒めた時、面倒だと思う人間は2種類いる。


嫌がる人間と、自身を卑下する人間だ。


前者は人間として腐っていると俺は思う。


他人が褒められているのが気に食わないなんて、何様のつもりだって思ってしまう。


後者はそこまでイラつく事はないが、フォローが面倒なのだ。


でも今回に限って言うなら、そのフォローもチャンスとなる。






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