偽りの先生、幾千の涙
俺はちゃんと見ているよってアピールすると、国木田さんがリラックスして話し始めた。
俺が聞きたい事、どっちでもいい事、色々あるけれど自分から話してくれた。
その会話の中で、俺が得た有益な情報は2つある。
榎本果穂は中学の時から性格が変わったという証言だった。
それまでは年に数回会うぐらいの子だったが、もっと無邪気で好奇心旺盛な子だったという。
それが中学に入った時は少し大人しい子になっていたという。
そして周りから特別視されるようになってから、逆に皆に優しくなったらしい。
国木田花音曰く、あそこまで誰にでも優しく、かつ平等に接する事が出来る人はいないだろうという事だ。
中学入学までの榎本果穂の振舞いが本性かは分からないが、そこまでの間に変わるきっかけを掴んだのは間違いない。
2つ目は幼少期の話だ。
榎本果穂は記憶力が良い。
国木田花音に比べたら、その差は歴然だという。
昔こんな事があったと話したら、自分以上に詳しく覚えていると国木田花音は言った。
でも何故か、4歳までの話はどれも「そうだったかな?」と返してくるという。
5歳以降は色んな事を覚えているのに不思議だと、国木田花音は思っているらしい。
…この件に関しては想像がつく。
榎本果穂の母親の死だ。