偽りの先生、幾千の涙


確認した後、私は着替えもせずにベッドに倒れ込み、目を瞑る。


ほっとしたような、気持ち悪いような複雑な気持ちだ。


死ぬのに失敗したのは最悪だ。


学校が始まってからよりも、春休みである今に死んだ方がいいかなって思っていたが、夏休みまで待とうか、いや、ゴールデンウィークでもいい。


学校が始まると、余計な詮索をされるまでの時間が短くなるから嫌なの。


とにかく、不本意ながら1ヶ月以上待たないといけない。


やっぱり最悪だ。


でもあのままお兄さんに監禁されたり、海外に売り飛ばされるのはもっと嫌だから生きる事を選んだ。


…それにしても、本物のお兄さんはどれなのだろうか?


助けてくれた時、エレベーターでのちょっと怖い感じ、家に着いた時の少し軽めのイメージ、それとも最後の一言…最後は違う。


嘘吐きの直観が告げている。


「まあいいや。
また会って怖かったら調べよう。」


私は制服を脱ぎ捨てて、部屋着に着替える。


もう今日は何もしたくないから寝よう。


部屋の照明を消して、寝る前にもう一度窓から街を見下ろす。


人工的に彩られた街はやはり美しかった。



< 6 / 294 >

この作品をシェア

pagetop