偽りの先生、幾千の涙



「お友達にも話せない?」


今それ聞くんだ。


「はい…本当に誰にも。
友人にも話していないんです。
お話し出来る時が来たら、もしかしたら伊藤先生に聞いてもらう事になるかもしれません。
その時はよろしくお願いします。」


友人にも伊藤にも、ましてや父親に言うなんて事はしないだろう。


だって父親が死にたい理由を作ったんだもん。


…もしかしたら、伊藤って私の父親の事が聞きたい?


あの人の弱味を握るためとか?


あの人は色んな人に恨まれているだろうから、その可能性はゼロではないが、だとしたらこんな回りくどい事をするだろうか?


「そっか。
答えづらい事聞いてごめんね。
でも…しつこいようだけど、俺ならいつでも聞くから。
その事でも、それ以外でも、何か話したくなったら俺のところ来て。」


「…ありがとうございます。
あの…逆に伊藤先生のことを伺ってもいいですか?」


伊藤の狙いは分からない。


でも今日確証したのは、伊藤が危ない人である事だ。


私に近付いて…どうするんだろう?


殺すんだったら何も抵抗しないけど、それ以外なら嫌よ。


人身売買なんてされたらたまったもんじゃない。


だから決めたの。


伊藤について調べるって。



< 66 / 294 >

この作品をシェア

pagetop