偽りの先生、幾千の涙


「そうですか…先生って人気の職業なんですね。」


適当に返しながら、次は何を聞くか考える。


「そうだな。
なるの難しいし、なれなくて諦める人も結構いたりする。
俺の友達もそんな奴いたな…」


友達か…そういえば、伊藤は名門私学の出身だ。


となると、伊藤の友達は…


「先生のお友達も?
大学や高校のお友達ですか?」


「ああ。
高校の時の友達も、大学の時の友達も。」


高校の友達…伊藤って何処の高校通ってたんだろう?


「伊藤先生、大学は確か東慶大学ですよね?
高校はどちらだったんですか?」


「高校?
皆が知らないようなところだよ。
言っても分からないと思うよ。
そんな賢いところでもないから。」


皆が知らないような賢くないところ?


それで水仙女子の教員にはなれないはずだ。


だどの先生も色んな意味で学歴自慢している学校だし、それがブランド力の向上に繋がっていると考えている学校だ。


それこそ大学だけでなく、中学受験で成功した人、水仙女子のOGにトップクラスの公立高校を出た人、そんな人ばかりだ。


何処の高校ですか?って聞かれるような高校に通っていたなら、ここは雇ってくれない。


本当の出身校は分からないが、伊藤は嘘を吐いている。


< 69 / 294 >

この作品をシェア

pagetop