偽りの先生、幾千の涙
会場に着くと、既に多くの人が会場に来ていた。
ざっと数えて50人程だろうか。
今年も参加人数は少しずつ減っている。
それぞれの事情があって来られないのは理解できるが、少し寂しい事に思えた。
「榎本さん!
こんにちは。
お父様から話は聞いているわ。
今年も来てくれてありがとうね。」
左を向くと、"被害者家族の会"の会長が挨拶に来た。
「御無沙汰しております。
父が今年も顔を出せず、申し訳ありません。」
「何を言っているの。
お忙しい方なんだから仕方ないわ。
それに去年も話したけど、この会が存続出来ているのは、貴女のお父様のおかげなのよ。
この場でお金の話をするのは憚られるけど、寄付金が年々減っててね。
でもお金よりもね、果穂ちゃんが来てくれる事の方が貴女のお母様はお喜びになるわ。」
「母がそう思ってくれているなら嬉しいです。」
私が今参加しているのは、14年前に起こった事故で家族を亡くした人々の集まりだ。
14年前、大きな病院で爆発事故が起こった。
反抗予告なんかはなかったとさるている。
でも病院の至るところに爆弾が仕掛けられていて、多くの方が犠牲になった。
私の母親もその一人だ。
もうすぐ弟が生まれそうで、母親は救急車で病院に運ばれた。
父親は仕事、私は家で待っているように言われ、家族は誰も病院には行っていなかった。
そして、病院で頑張っていた母親と、もうすぐ顔を出すはずだった弟だけが死んだ。