偽りの先生、幾千の涙
過去に戻れるなら、私もそんな出会い方をしたかった。
「本当に何故あんな事になったんでしょうね。」
事故なのか、事件なのか、少なくとも公には発表されていない。
病院は跡形もなく、証拠らしきものは何も残らなかった。
それ故、警察は捜査が殆ど出来ないままに終わった。
多くの人が亡くなったにも関わらずだ。
「本当にどうしてだろうね。
事件だろうが事故だろうが、原因を創った奴が今ものうのうと生きていると思うと…冷静に考える事が出来ないよ。
いっそのこと、この手で苦しめてやりたいぐらいだ。」
「お気持ち…分かります。」
関わった人間全員、不幸な目に遭えばいい。
皆川さんや私、被害にあった人とその家族の苦しみを味わせてやりたい。
私にも同じ気持ちがある。
理性がなければ暴れだしそうな程の怒りが私達を支配していた。
「皆川さん、果穂ちゃん、そろそろ式典を始めますよ。」
会長に促されて、私達は各々に用意された椅子に座る。
重苦しい空気の中、一人ずつ線香をあげて、手を合わせる。
手を合わせる時間は人によって違う。
すぐに終わる人、1分ぐらい動かない人…皆川さんは少し長めだったと思う。
背中からは悔しさや悲しみが滲み出ていて、見ているのが辛かった。