偽りの先生、幾千の涙


私はその姿に安心したんだ。


まだこんな方もいる。


過去にばかり囚われていてはいけないのかもしれない。


新しい人生を歩んでいく事しか私達には出来ないのだから。


でも忘れなくていいんだ。


お母様を、会えなかったけど楽しみにしていた弟を。


私は久しぶりに泣いた。


昔みたいに声をあげてはいないが、雨のように流れてくる涙を止める事が出来なくて、ずっとハンカチを握っていた。


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