偽りの先生、幾千の涙


「やかましい!
ああそうだよ!
俺がやったんだよ!
知っているのは俺とミスした奴とそこの部長だけ。
他の常務連中は知らないのをいいことに、2人が病院に説明する日と時間を選んで爆破してやったよ。
これで全部消えたんだ。
念のためミスがないか確認しようとしたのに、お前という奴は…」


その時、ガタッという音がした。


冷静に話していた男の苦しげな声が聞こえてきた。


父さんは顔を青くして、足音を立てずにその場から離れた。


もしかしたらまた爆発するかもしれない。


恐れた父さんはその日の予定を体調不良でキャンセルし、家に戻ったという。


その2日後、この弁護士事務所は倒産した。


倒産3日前から行方を晦ました弁護士の1人が遺体で見つかった事から、この弁護士が何かしら関わっているに違いないとニュース等は報じた。


だが死んだ本人からは何も聞き出せず、この騒動も有耶無耶になって終わってしまった。


父さんはこのニュースを見た時に怒りを覚えた。


会社のミスの隠蔽の為、多くの人が犠牲になった。


しかもそれを知った人々を死に追いやった。


旧友と呼び、頼ろうとして人物をだ。


その日、父さんは誓った。


大手医療機器メーカー上役、榎本悟郎に復讐する事を。



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