偽りの先生、幾千の涙
「は?」
珍しくこちらを向いて話す弟は猫なのか。
気まぐれにも程がある。
「だから!
国木田花音ってどんな子?
顔可愛い以外!」
「海斗、お前ああいう子タイプじゃないだろ?」
海斗が遊んでいる女の子は派手な格好した子ばっかりだ。
生粋のお嬢様みたいな子が好きとは到底思えない。
「見た目結構好きな感じだけど?
目が大きくて、背が小さくて、小動物っぽい子。
可愛いじゃん、女の子って感じで。
逆に榎本果穂みたいな子は無理だな。
美人だけど、ツンとしてて、気も強そうで、あれは無理。
まあ遊んでくれる子だったら基本的に大歓迎だけど…」
聞いてもいない事までべらべらと語り出す海斗を無視して、俺は学校に持って行ってるタブレット端末の電源を入れる。
国木田花音のデータは上から2つ目で、要注意人物の証である星のマークが付いている。
どんな子と聞かれても、榎本果穂とのエピソード以外は記していないから、普段の事しか話せない。
俺はすぐにタブレット端末の電源を切る。
そして切った瞬間に大事な事を思い出して、こう答えた。
「業務上の秘密なのでお答え出来ません。」
「ケチ。」
「何とでも。」