偽りの先生、幾千の涙


国木田花音は重要参考人みたいなものだ。


海斗とは言え、易々と情報を渡してはいけない。


それに手を出されたら、後で面倒になる。


「分かったからさ、教えない代わりに何か作ってよ。
お腹空いた。」


「お前な…」


何歳だよってツッコミはなしで、ジャージのまま財布を持ち、念のためカーテンを閉める。


海斗にさっきのウィッグを被せ、無理矢理外に連れ出した。


「俺も行くわけ?」


「人の家で飯食うなら、買い物ぐらい付き合え。
どうせ晩飯も食ってく気だろ?」


「流石兄さん、分かってる。」


俺は溜め息を吐きながらも、何処か懐かしい気持ちになる。


昔はこうだった。


海斗と2人で買い物に行って、俺が飯を作って、その間に海斗が風呂掃除したりして、父さんの帰りを待って…あの頃は良かったな。


過去を思い出しながら、俺はふと思う。


あの頃に戻ってみたいと。



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