偽りの先生、幾千の涙
4つ目の嘘 近付く距離

side by 果穂



5月も半ばを過ぎた。


怪しげな個人面談も終わり、私の生活は平和を取り戻しつつある。


他の子にも面談の様子を聞いてみたが、伊藤への不信感は募るばかりだ。


休み明けに面談した子は皆、学校で尊敬できる人は誰かと聞かれ、その事に関して掘り下げられたと言っている。


掘り下げられたのか、彼女達が勝手に語りだしたのかは不明だが、問題はその答えで、案の定、皆が私の名を挙げたのだ。


正直言うと、答えは推測出来るのだが…伊藤は皆の答えを分かっていて聞いたのではないだろうか。


だとしたら悪質だ。


本人に直接聞いてやりたいのだが、表向き悪い事をしていない伊藤に聞ける事がないのだ。


花音ちゃんからはまだ報告は上がって来ないし、私も伊藤のタブレット端末には近付けていない。


さてどうしようか…


ガタンゴトンと震動する電車の中で、私は考えを巡らせる。


今まで伊藤を避けるように行動してきたが、逆に近付く方法を考えた方が良いかもしれない。


だが…どうにも集中出来ない。


帰宅する人々の群れに押し潰されそうになりながら、人々の揺れに身を任せている。


立っているので精一杯なのだ。


家庭教師と喧嘩して、勉強を教えてもらいにくいという子に、長々と英語を教えていたらこんな時間になってしまった。


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