偽りの先生、幾千の涙
伊藤貴久ってどんな人なんだろう。
今日の伊藤はいつもと別人だった。
あれが本当に伊藤なのかもしれない。
少なくとも、嘘っぽい作り物ではない。
私はまた考える。
伊藤は何がしたんだろう。
どうして私と話す時だけ獰猛な目をしているんだろう。
やっぱり私から何かを聞き出したいの?
だとしたら何が知りたいの?
いっそのこと、これとこれについて知りたいから教えてって言ってくれた方が楽なんだけどな…
そんな簡単に聞けないような事でもあるの?
父親に復讐したいとかかなって思ったりもしたけど、私が考えもしないような事にでも使うのかしら?
もしかして、私が関係しているけど、大して関係ない?
それなら何度か助けてもらっている事も納得が出来る。
でも行動は納得できても、雰囲気の違いは納得できない。
もしかして、本当は優しいとか?
なくはないけど、そんな漫画みたいな人いるのかな?
っていうか、それならいつも優しくしてくれたらいいし、皆に対しても”優しい素”で接したらいいじゃない。
…伊藤って全然分からない。
いっそのこと、本人に直接聞くしかないかしら。