あの日、あの桜の下で
「まあ、それもあるけど。できたらそこで役に立てる人間になりたいんだ。もちろん俺一人の力じゃ、できることも限られてくるけど。世界中のいろんな人と協力したら、何だってできると思うんだ」
そこで彼は、じっと話に聞き入る私を見つめて微笑んだ。
「だから俺は、『芝原尊に言えば何とかなる』って、世界中の人に思ってもらえる人間になりたいんだ。そのためには、まずビジネスで資金を作って、世界の人に知ってもらって……。」
あまりにも壮大すぎて、私には彼がどうやってそれを成し遂げようとしているのか、想像もできなかった。
「……高校生にもなって、夢みたいなこと言ってるって笑われそうだから、誰にも言ってないけど、これが俺の夢だよ」
そう言って、恥ずかしそうに笑った彼。
「夢だけど、『夢みたい』じゃないよ。尊くんなら、どんなことでもできるよ」
私には、そんな月並みなことしか言えなかったけど、私の心の全てで彼を励ましたつもりだった。
そして、そんな彼の未来予想図を私も一緒に想像して、私の未来も明るく拓けていくような気持ちになった。
その時はただ、いつも彼が側にいてくれて本当に幸せで、その幸せが『夢みたい』だと思っていた。