あの日、あの桜の下で


その日の夕暮れ時に、あの桜並木まで彼は私を送ってくれた。
傾いた日の淡く柔らかい日に照らされ、舞い散る花びらの中で、彼が並んで歩く私の手を取って言った。


「……君を一生、大事にするよ。この桜に、誓うから」


まるでプロポーズのような彼の言葉に、私は心がいっぱいになって、頷くだけで精いっぱいだった。
だけど、やっぱり私たちは、そんな約束をするにはまだ幼すぎて……。

それでも、一緒に生きていける〝未来〟――。彼も私もそれを信じて疑わなかった。



私はそれから何度か彼の家へ行って、そのたびに彼の想いに応え、彼に愛してもらった。一途な想いばかりが先走って、その行為本来の悦びなんて知らなかった。

ただ彼と繋がれることが本当に嬉しくて、いつもこのまま時が止まってくれればいいと思った。


「……どうして尊くんは、こんな私を好きでいてくれるの?」


ある時、彼と一つになった後、横たわったまま彼の腕の中で、尋ねてみたことがある。

どうして彼は完璧なのに、こんな不釣り合いな何の取り柄もない私のことが好きになったのだろう。
それは、誰よりも私自身が一番不思議に思っていたことだった。


彼は、〝なんでそんな分かり切ったことを訊くんだ?〟というふうな顔をして見せたが、ニッコリと笑って答えてくれた。


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