あの日、あの桜の下で


「……アメリカの?」


彼は〝東大〟を受験するものと、私は当然のように思っていたので、この時受けた衝撃は大きかった。

優秀な彼だけが受けていた特別な〝模試〟……私がそう思い込んでいた試験は、アメリカの大学に入学するために必要なSATというものだったと、後になって知った。


「もちろん、今のところ日本の大学に行くことも考えてるけど、……同時進行でね」


彼の小さい頃から慣れ親しんだアメリカ。そこの大学に行くことは、彼にとって私が考えているほど大変なことではないのかもしれない。

…でも、この数ヶ月の間思い悩んでいたのは、きっとこのことだったんだと思った。その悩んでいる原因の一つが、私のことだとしたら……。


「……アメリカの大学なんて、すごいね!挑戦しようと思ったんなら、頑張ってほしい!」


私も頑張って、私の中にあるすべての勇気をかき集めて笑顔を作った。彼には、迷うことなく自分の力を発揮して、前に進んでほしかった。

私がそう言って励ましても、彼はまだ思いつめた顔をして、確認する。


「本当に?小晴はそう思う?」

「うん」


と、私ははっきりと頷いてみせたけれども、心の中では動揺して震えていた。


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