あの日、あの桜の下で
旅立ちの春
三年生になった当初、私は彼が東大に行くと信じていたので、東京にある大学を志望していた。少しでも近くにいたいと思っていたけれど、さすがにアメリカの大学にまでは付いて行くことは出来ない。
それに、『地元の大学に行ってほしい』という両親の希望もあって、結局は地元の大学を受験して、そこに合格した。
彼も、アメリカに行く準備をしつつ日本の大学も受験し、難なく東大へ合格していた。
「一応、プリンストン大学に願書を出してるけど、合格するかどうかは分からないよ」
アイビーリーグの中でも上位の大学。合否が判るのは、四月に入ってからになるらしい。
「……でも、わざわざ東京にアパート借りるくらいなら、いっそのこと四月からアメリカに来いって、父さんが言ってるんだ」
彼のお父さんは、アメリカで会社を経営している。どんな会社かは聞いたことはなかったけど、きっと後継ぎとして彼に期待しているのだろう。
「じゃ、もう東大には行かないの?」
「東大には一応入学手続きはしてるんだ。だから、休学届けを出して、アメリカに行くことになるかな……」