あの日、あの桜の下で



春の淡く青い空に、小晴の夫の手により凧が高く揚がっていく。

小晴は河原で我が子と手を繋いで、尊は一人で遠く桜並木の下から、それぞれに空を見上げた。


――尊くん……。あなたと離れて、私はずっと人を好きになれないでいたけど、やっと幸せを見つけたよ……。


心の中でそう語りかけながら、小晴がふと桜並木の方へと目をやると――、

そこには満開の桜から、はらはらと花びらが落ちるばかりで、もう尊の姿は見えなくなっていた……。











       ― 完 ―


    「あの日、あの桜の下で」

        2017.3.31
        2018.3.19(改稿)




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