あの日、あの桜の下で


その彼の彼女になった私は、机に心無い言葉を落書きされたり、提出したはずの課題がなくなってたり、何気なく陰湿で幼稚な嫌がらせをされるようになった。

理不尽なことだと思う気持ちもあったけれど、やっぱり〝分不相応〟なことなんだと、私自身が一番よく分かっていた。



……そして、夏休みに入る直前、学校を上げてのクラスマッチが行われる日のことだった。決定的な出来事が起こってしまう。

これからグラウンドに集合するというとき、私が着替えようとしたら、体育着がなくなっていることに気がついた。

親しい友達も一緒に探してくれたが、見つからない……。着替えをすることができず、一人だけ制服姿で途方に暮れていたら、


「……どうした?体調でも悪いの?」


と、彼が声をかけてきてくれた。


「今日の朝、持って来て、ロッカーの中に置いてた体育着が見当たらないの……」

「……なんだって!?」


私が事情を打ち明けると、彼は思考を巡らせる少しの間黙っていたが、意を決するように自分の体育着をその場で脱ぎ始めた。


「小晴は、これを着てな」


と、彼の体育着の上下を渡される。私は頬を赤らめながら目を丸くした。


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