あの日、あの桜の下で
「…でも、それじゃ、尊くんが……」
ボクサーパンツ一枚だけの姿になってしまった彼を、私が心配すると、
「俺は、男だからコレで大丈夫!」
と、彼はそのままの姿でグラウンドへ走って行ってしまった。
その後、グラウンドは大騒ぎになった。
下着一枚でサッカーをする彼の姿に、生徒たちはもちろん先生までもが唖然となった。
「おい!二年の芝原がターザンみたいな格好で、走り回ってるぜ!」
それでなくても有名な彼は、全校生徒の注目の的になり、彼が出場する試合には人だかりができた。
ようやくこの騒ぎのことが生活指導の先生の耳にも入ったらしく、血相を変えてやって来た。他のTシャツやジャージを着るように言われたけれども、彼は頑としてそれを受け入れなかった。
本当に、まるでターザンのような彼に鼓舞されて、私たちのクラスは総合優勝をした。表彰式の賞状を受け取りに出た彼の姿に、校長先生も驚いて目を丸くする。
「どうして君は、そんな姿をしてるのかね?」
訳を訊いた校長先生に、彼は向き直って一礼した。