そばにいて
あれ?
いつもなら、スマホのアラーム音とともに寝室に現れる白猫のミキがいない。
「ミキ~?」
パジャマのズボンに手を突っ込んで彼女の姿を探す。
「ミキ!?」
ミキはキッチンのエサのそばでうずくまっていた。
そばには吐物がある。
「どうした!」
その場に屈んでミキを優しく撫でてやると、「うにゃあ……」と元気なく鳴いた。
病院に連れて行った方がいいか?
ああ、どうしようか。
今日は重要な会議が朝からあるし、一日スケジュールがびっしりと詰まっている。
あーくそっ。
ミキをゆっくりと抱えると力なく俺に頬ずりをする。
ミキだって大事な家族なのに、どうしてこんな時にどうすることもできないんだ。
とにかく、今日は定時に上がるぞ。
そうすれば、七時まで診療もやってる近所の動物病院に間に合う。
ミキ、頼む。
それまで無事でいてくれよ。
後ろ髪ひかれる想いで出社した。
頼む、ミキ。
ミキを、まだ俺の元にいさせてくれ。
お前の元へはまだ連れて行かないでくれ。