三つ葉のクローバー




実はその時の瑠華の泣き顔を思い出して小さく笑った。




「お、東條ごきげんだなー」




「優(すぐる)おはよ」





校門の前で声をかけられて、クスリと余裕の笑みを返す。




「昔のことを思い出して、つい」





ふわりと柔らかく笑う実に近くにいた女子生徒が頬を染めた。








「東條君、お、おはようっっ!!」









一生懸命挨拶をして走り去る後輩達を何人も見てきた。





「おはよう」




そう返した時にはその子はいなくて、いつも虚しく消えてしまう。



「今の子可愛かったなー」



優は手でメガネを作りながら彼女の走って行った先を見ていた。



「残念、早すぎて見えなかった」




「そりゃどんまい」





優は軽くそう返して先を歩いた。



名門私立の制服を着ているだけで、誰でもかっこよく見える防護服を身にまとっている気分だった。




高校に入って、確実に声をかけられる回数が増えた。







< 10 / 11 >

この作品をシェア

pagetop