三つ葉のクローバー
実はその時の瑠華の泣き顔を思い出して小さく笑った。
「お、東條ごきげんだなー」
「優(すぐる)おはよ」
校門の前で声をかけられて、クスリと余裕の笑みを返す。
「昔のことを思い出して、つい」
ふわりと柔らかく笑う実に近くにいた女子生徒が頬を染めた。
「東條君、お、おはようっっ!!」
一生懸命挨拶をして走り去る後輩達を何人も見てきた。
「おはよう」
そう返した時にはその子はいなくて、いつも虚しく消えてしまう。
「今の子可愛かったなー」
優は手でメガネを作りながら彼女の走って行った先を見ていた。
「残念、早すぎて見えなかった」
「そりゃどんまい」
優は軽くそう返して先を歩いた。
名門私立の制服を着ているだけで、誰でもかっこよく見える防護服を身にまとっている気分だった。
高校に入って、確実に声をかけられる回数が増えた。