オカンみたいな君が好き
オカンみたいな君が好き
「弁当持ったか?

教科書忘れてねえか?

それから家の鍵は…」


「かけた!」


私は溜め息を吐く。

毎日毎日繰り返されるこのやりとりに、私はすっかりうんざりしていた。


「お弁当もあるし教科書も忘れてない!

何なら折り畳み傘もポケットティッシュもハンカチだって持ってるわ!」


「それならいいけど」


私の忘れ物をここまで気にするやつの正体は、私の幼なじみであるトーマ。

私のやることなすこといちいち口出してきてうるさいことこの上ない。


「なにも怒ることないだろ?」


そっぽを向いた私にトーマは言った。

それはまるでおもちゃを買ってと泣きわめく幼子をあやすようで、私はさらに嫌気が指した。


「トーマはいちいちうるさいんだよ」


トーマは分からないという顔をして「いいから行くぞ」と歩き出した。私もその後ろを歩いた。


トーマは、良く言うと、世話焼きだ。

そして優しい。

優しいからこそ、人の世話を焼くことに飽きないのだろう。

ただ、家にいるときでさえ母親からなんだかんだと耳にたこができるほど言われるのに、学校に行ってもトーマがまるで母親のように口うるさいからたまったもんじゃない。

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