オカンみたいな君が好き
「はあ、はあ…」

走って走って、体育館裏。

ここまで来れば流石のトーマも諦めるだろう、多分。


「あれ、田口さん?」


息を整えていると誰かに名前を呼ばれた。

声がした方を見ると、そこにいたのは知らない男子生徒。


「田口さん」


男子生徒はなぜかこちらに駆け寄ってきた。


「えっと…?」


首をかしげていると男子生徒は緊張した面持ちで「あ、あの!俺、2-Cの森田です!」と自己紹介した。

残念だが名前を聞くのも初めてだ。


「俺、ずっと田口さんに憧れてたんです!」

「は?」


森田君というらしい彼の口からはびっくりすることばかりでてくる。思考回路が分からない。


「あの、俺田口さんのことが好きです!つ、付き合ってください!」


森田君は頭を下げる。


「えっ、ちょ、あの」


展開が急すぎやしませんか。

びっくりしすぎて何て答えればいいか悩んでいると、後ろからぐっと肩をひっぱられるように抱き締められた。


「悪いけど、こいつのことは誰より俺が知ってるし理解してるんだよなぁ」


誰、なんて思わなかった。

その匂いを私は知っているから。

誰より知っているから。


「こいつのことをちゃんと面倒見れるのは俺だけだ」

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