オカンみたいな君が好き
トーマの台詞に私はひどく納得してしまった。


そうだ、私達はずっと一緒だった。

だからこそトーマは誰より私を知ってる。

私はトーマを誰より知ってる。

こんなにダメダメな私をトーマより理解して受け止めてくれる人は、きっとこの先現れはしない。


「……ごめんなさい」


私は森田君に頭を下げた。


「私、トーマが好きです」


森田君とトーマは固まってしまった。

想定外だったんだろう。そりゃそうだ、私だって想定していなかった。

トーマが好きだと言ってしまうなんて。


「だから、ごめんなさい」


すると森田君は「ですよね」と言った。


「分かってしました、最初からダメだって。

田口さんが幼馴染みのことを好きなこと、俺の入る隙なんてないこと、知ってました」


失恋した直後にこんなにも微笑む森田君は、きっと優しい人なんだと思った。


「お幸せに、なってください」


森田君はそれだけ言うとその場を後にした。

残されたのは私とトーマだけ。

静寂に包まれていて気まずさが漂っていた。

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