甘えたいお年頃。
「……手伝ってやろうか?」
「……へ?」
ぽりぽりと頭を掻きながら、確かにそう言われた。
「え、でも、アンタ部活とかは」
「……普段集まるようなとこじゃないから」
「そんな部活あった?」
「……文芸部」
「……えええ!?」
何、と軽く睨まれる。
この男、確かに運動が出来るとかめちゃくちゃ頭が良いとか、そういう印象がつきにくい人物ではあった(顔と言われたら話は別だが)。
ましてや存在を知らなかった文芸部に所属しているなどと誰が思うだろう。
里菜は知ってるんだろうな……好きな人のことだし。
「……だから、文章ならまかせて」
「でもこれ小論文だよ?」
「この間のは一発でOKもらったから。……信用して」
ぐ、と言葉がつまる。
尚人はただじっと私の方を見つめたまま立っている。
「……じゃあ、その、お願いシマス」
「……なんで片言。好きでやってるんだし、気にすんな」
そう言うなり、尚人は突然私の腕を掴んだ。
何、と驚く間もなくそのまま教室の方へと引き摺られていった。
幸運にも里菜や他の生徒には見られずに済んだが、この男は本当に考えていることが分からない。
現に何故私の小論を手伝うなどと言ってくれたのか、私には全く見当も付かなかった。