甘えたいお年頃。
第一章 運命とは突然変わるものである。
そろそろ雪が溶けて、春の兆しが見える頃。
私ーー渡海深鶴が今とある高校に通う高校二年生……になる、少し前の話だ。
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「みーーつーーるーー!!」
ちょうど時計は12時半をさしている。
四時間目の授業が終わり、昼ご飯を食べ終えた直後のことだった。
顔を上げると、双子の姉が楽しげな顔で私を呼んでいる。
その周りには数名、クラスでも中心にいるような女子生徒が座っていた。
いかにも正直お前いらないけどな、という顔で。
「……何?」
深月は言葉で言わずに手招きしてくる。
渋々近寄ると、そこにいた女子達はまた話し始めた。
「次の土曜日、うちの誕生日パーティやるの。それで深月ちゃん誘おうと思ってて……ついでに深鶴ちゃんもどう?」
「はあ……」
スマホのメモには
『3月4日 12時~ 里菜の家
プレゼント交換 お昼ご飯 誕生日ケーキ』
と大体の予定が入っている。
ついで、という言葉には多少引っかかるが、この日であれば特に差し支えはない。
「ねえ深鶴いこうよ! 里菜ちゃんだからきっと楽しいよ!」
「……分かった。じゃあ深月と一緒に行くよ」
えっ、と一瞬ほぼ全員が驚いた。
深月だけはやったー! とはしゃいでいる。
当然だろうな、いっつもこういうのはパスしていたから。
少しくらいは付き合ってやってやってもいいだろう、という気分だったのだ。
「じゃ、じゃあ深鶴ちゃんも入れて……15人ね!」
「そんなに来るの? すごいね!?」
「うん、いろんな子に声かけてるからー……よし、じゃあ土曜日うちの家に来てねー!」
はーい、と了承の返事をすると、今度は弁当を出して皆でわいわいと食べ始めた。
深月にまた誘われるが、もう食べたと言って断り、自分の席に戻る。
深鶴ちゃんが来るなんて意外だね、という話し声が聞こえたが、それを無視して数学の小テストの範囲である教科書を開いた。