甘えたいお年頃。


「なんっ……!?」


呆れたような顔をして、里菜は私を見ている。
私はと言うと、どうしても驚きが隠せなかった。

列車での会話をどうして知っているのか。


「うちの『友達』の一人がさ、偶然聞いちゃったらしいんだよね。おんなじ列車に乗ってて。わざわざ私に教えてくれたの」
「それ……って」


里菜はLINEを開き、画面を見せてくる。
個人チャットの内容には、確かに私と深月が離していた内容が書かれていた。
誰が、とユーザーネームを見ると、そこには『春谷 尊』とある。


「尚人くんの後輩。パーティの時に一緒にいた子なんだけどね。しつこく連絡先聞いてくるから教えてあげたら、こんな情報が流れてきてさ」
「……でも……」
「二人揃って最低だね。しかも尚人くんとも仲良くしてたんでしょ? うちが彼のこと好きだって知ってるくせに」


冷たく吐き捨てた彼女の言葉に、なんと返せばいいか分からなくなった。
何も言わずに黙っていると、里菜はまた大きくため息をついて私を睨んだ。


「深月にも言って。もう二度と、うちに近づかないでって」
「そ、そこまでしなくても……」
「じゃあね」


吐き捨てるように言うと、里菜は私の筆箱をまたいでさっさと教室を出て行ってしまった。
しばらく立ち尽くしていたが、はっと我に返ると時計は6時半を回っている。
急いで自分の荷物をまとめ、教室のカーテンと電気を確認してから、私も教室を後にした。

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