甘えたいお年頃。
学校を出て、外を歩いていてももやもやとした気持ちは収まる様子がない。
ぐ、とこらえてさらに歩く速度を速めた。
深月は確かに、多少人の嫌なところが目に付くと、まっすぐに注意してしまうところがある。
けれどそれでも、他人を嫌ったり苦手意識を持つようなことは絶対にない。
私とは正反対だ。
自分が罵られたことよりも、深月の信用を失わせてしまった事が、何よりも堪えている。
私のせいだ。
私が、深月の友達を一人、失わせてしまったんだ。
「……はあ」
右に曲がって、いつもの最寄り駅に着いた。
中に入って電光掲示板を見ると、次の列車まで20分ほどの時間だった。
周りは大体同じくらいの時間に出てきたであろう、部活帰りの学生で溢れかえっている。
「あいつさーまじで気持ち悪いよね」
「わかるー! ていうか今日の授業とかマジざまーみろみたいな?」
誰かの、女子の声が聞こえた。
生物基礎の授業を思い出す。
「えーそんなにっすか?」
「そうだよーあいつ今日めっちゃぼーっとしててさあ。黒板の前で立ってるだけで」
確かに数学で解けって言われて公式すっぱ抜けて黒板の前で固まってたな私。
「あと放課後に担任に呼び出されたよ。誰だっけ、あの1組のイケメン……霜月? だったっけ? と一緒に歩いてたし」
「なんか調子に乗ってるのかしらないけど、見せつけられた里菜可哀想~」
「ほーそりゃあ大変っすね!」
待て。
完全に私じゃないか。
それは確実に私だ。どう考えても私だよ。
なんでそんなことここで話してるんだ今すぐやめろ。
「二人ともご協力あざしたー!」
「いやいいよこれくらい。君も頑張って!」
ゆっくり、声のする方を向く。
「……あっ」
二人の女子生徒と、一人の男子。
女子は放課後の自習のためにクラスにいた二人だと分かった。
「……協力ってなんですかね」
「あ、えっと……」
そして、真っ青な顔をしている、見たことのある男が立っている。
服装が全く違うが、彼に間違いはなかった。
――尊。
私が振り向いた瞬間、尊は猛ダッシュで逃げ出した。
後を追いかけようにも、人が多すぎてすぐ見失う。
結局私は尊に追及するのをやめ、いつも通り列車に乗り込んだ。