甘えたいお年頃。
10分程経過する。
すぐに決まると思っていたが、そう甘くはなかった。
副委員長と記録係は決まったのだが、肝心の委員長には誰も手を挙げない。
まあ当然だ。
他の二つの役職に比べて圧倒的に面倒なのは誰にでも分かる。
周りをみる限り、そういったものに立候補するような積極的な人物などいない。
かく言う私もその一人だが。
ふと、顔を上げると、周りの男子に絡まれている尚人の姿を見つけた。
どうやらお前がやれよとからかわれているらしい。
本人は何も言わずに黙っているのだが。
その時だった。
「せんせー、私霜月くんがいいと思いまーす」
唐突すぎた。
私の前の席に座っていた女子が、立ち上がってそう言った。
教室は一気に静かになる。
「推薦はいいけど、どうしてそう思うの?」
「なんか渡海さんがそう言ってましたー」
「……は!?」
あわてて私は顔を上げた。
周りの視線はあの女子から私に切り替わる。
「い、いや、ち、違いま」
「皆がちゃんと言うこと聞きそうだからーって話してたよねー? 私も同じだからさー」
彼女を止められない。
突き刺さる視線が痛い。
そもそも発言すらしていない私に何を言ってるんだ。
ちらっと尚人の方を見る。
尚人は何も言わずに黒板を向くだけだ。
「うーん……じゃあ、他にもいなさそうだし、霜月くんお願い出来るかしら」
「……分かりました」
尚人は大きくため息をつき、椅子から立ち上がる。
「お、おいまじかよ」
「……渡海さんにやれって言われたからやるよ」
待て。
なんだその理由。
私は何もいっていない。
そして尚人に命令なんてしてない。
私の心の声を無視して、尚人は淡々と話し合いを進め始めた。
話し合いは多少係の奪い合いはあったものの、無事に終わることができた。
淡々とした尚人の進行もなかなか悪くない。
休憩時間、トイレに行こうとして立ち上がった時だ。
「あ、ねえ渡海さん」
……前の席の女子に声をかけられた。