甘えたいお年頃。
「すごいね、やっぱそういうの作る人っているんだあ」
「まあクラスで共有できるならいいんじゃないの」
グループに入るなり、いきなり通知が出る。
誰かがふざけているのか、大量のスタンプがグループに送られてきた。
教室でスマホを開いていた何人かは「なにこれ」とイラついた様子で通知を切っている。
「うっわ……迷惑だねー」
「……はあ」
スタ爆が終わると今度はメッセージが流れてくる。
『よお!俺だよ俺!
志望校はちょー有名な●×大学!
低脳なお前らよろしくな!
ちな女子は美人しか相手しねーから!笑
自分が美人だと思った奴だけ俺のところに告白しに来いよ!笑笑笑』
「いや誰だよ」
「新手のオレオレ詐欺だね」
名前を確認すると、そこには『霜月尚人』の文字があった。
驚いて尚人の方を向くが、本人は黙々と本を読みながら弁当を食べている。
その横で、男子の軍団がニヤニヤしながらスマホを操作していた。
「尚人ー、お前の挨拶打っといたからー」
「……ん」
そのまま何事もなかったかのように男子の一人がスマホを返す。
尚人は唸るように返事をして受け取り、そのまま鞄の中にしまっていた。
メッセージを見た他の女子はほとんど顔をしかめて男子の方を睨んでいる。
いくらいっつも何も言わないからってやり過ぎ、という声もした。
「深鶴、これはさすがに……」
「いいんじゃないの。霜月くんは気にしてないみたいだし。ただの悪ふざけでしょ?」
「でもさあ……」
「ほっとけほっとけ。当の本人は大人だから一々言わないでしょ」
そう言いながら私がお昼を食べ始めた頃には、尚人は教室の外へ出ていたようだ。
深月も一緒に食べるのかと思ったら、クラスで新しい友達と食べるらしい。
深月が出て行った後、私はまた一人でその後の時間を過ごした。