甘えたいお年頃。
店内はまさに女の子! というようなかわいい装飾が施されており、品揃えもまた普通の本屋にはないような柄の多いグッズで溢れかえっていた。
正直、ここまでデザインされたものは好きじゃない。
どれを手に取ってみてもあまりしっくり来なかった。
そもそも誕生日だという里菜ーー純善 里菜(すみよし りな)とはこれまで一度も話したことがない。ましてやどういったものを好むかなんて知っているはずがなかった。
自分のものではないが、あまりにも変なものを贈られても印象が悪くなる。
深月にしばらくついて行こうとしたが、いつの間にか深月とははぐれてしまっていた。
「……はあ……どうしよう」
何を買えばいいのやら。
ふらふらと文房具コーナーを見て回る。
「……」
一瞬視線を感じた。
振り返ると、一人の男子学生が入浴剤コーナーで唸っているのを見つける。
この店にも男って来るんだ。
誰かーー彼女にプレゼントでもするんだろうか。
ただその時はそれだけ思った。
「深鶴ー! 買えた?」
「うん……これでいいかな。あの人の好み全く知らないけど」
店を出ると、深月はちょうど入り口前で待っていた。
とりあえず適当に、と選んで買ったのは水色のシンプルな筆箱。
それを見た深月は数秒間、何度か私の顔と筆箱を交互に見た。
「……な、何」
「……やっだーー!! 嘘でしょ!?」
「何が!?」
突然深月はゲラゲラと笑い始めた。
わけもわからずにぽかんとしていると、深月は自分の買ったものをわざわざ目の前で開ける。
その中に入っていたのはーー
「……いやいやいやこれはっ、ふふ……」
「同じの2個もいらないって言われそうだよねーあははは!」
全く同じ形の、薄いピンク色の筆箱だった。
散々笑った後さすがにこれはまずいか、と二人で別の店に行って買い直した。