甘えたいお年頃。
誕生日パーティの日。
絶好の晴天。
しかし、その日の朝は少し慌ただしいものだった。
私の格好を見た深月は突然悲鳴を上げたのだ。
「何その格好!!」
「何って……いつもの格好じゃん」
馬鹿! と言いながら私の頭を叩く。
朝ご飯を食べる私はいつものパーカーにただのジャージを穿いていた。
自称休日ニートである私にとって、この格好は一番楽なものだ。
勿論、この格好でパーティに行く気はない。
「じゃあ用意してあるの?」
「いや……直前でいいかなって」
「えーーー……深鶴のセンス不安だから今のうちに決めさせて!!」
「ええ……まあいいけどさあ……」
トーストを食べた後は地獄だった。
出す服全てにNGを出され、組み合わせたそれも拒否される。
じゃあどうすりゃいいのさ! と声を上げた瞬間、今度は深月が自分の服を取り出し私に着せては「これやっぱり合うよ!」と勧めてきた。
しかし好みがあわず、気に入らないと言うとまた頭をはたかれる。
その後どうにかして服装が決まると今度は髪。
もしゃもしゃでいつも整えるのがブラシだけの私に盛大なダメ出しをし、アイロンで前髪を整えるやら寝癖をどうにかして押さえつけるやら……とにかく時間がかかった。
私の格好がフル深月コーデになると、やっと彼女は満足したように朝食を取り始める。
ふと深月の格好を見ると、すでに彼女は私と同じように綺麗に整えていた。
「いつ着替えたの?」
「え? 深鶴の考えてる間に」
私が着ているハイウエストのジーンズとセーターとは違い、深月は花柄のワンピース。この時期に寒くないのかと思っているとまた深月が口を開いた。
「ていうかさ、深鶴だってもう少しかわいい服着たっていいと思うんだよね! 今の私とお揃いにしても絶対違和感ないって!」
「何言ってんの……そういうキャラじゃないじゃん、私」
「えー!? おんなじ顔してるからってキャラとか大事?」
キャラとか大事?
その言葉はやけに私の心に引っかかる。
「……あのさ」
「うわーー!?」
さ、と言いかけたところで深月はまた先ほどのように叫び声をあげた。
時計を見るが、まだ10時を回ったばかりだ。
「まだ余裕じゃん」
「何言ってるの!? 10時の列車に乗らないと里菜ん家着けないんだよ!?」
「え、何分?」
「10時13分!! 乗り継ぎは50分も間空いちゃうし駅から里菜の家まで最低でも30分歩かなきゃなんないんだから!!」
「嘘でしょ!? なんでのんびり私のコーディネートしてたの!?」
慌てて二階に置いていた純善への誕プレをカバンに入れ、やっと私と深月は駅に向かって走り出した。