甘えたいお年頃。
シンプルなデザインのわりに高級感がある玄関に着くと、里菜が待っていた。
里菜は少しドレスに近いような、背中の露出が大きい淡い水色ワンピースを纏っている。
さすが主役だね! と深月が褒めるとまんざらでもなさそうに喜んでいた。
「このまま上がって~」
「え!? 靴脱がなくていいの!?」
「うちの家、海外方式(?)だから。嫌ならスリッパでも出そうか?」
「いや、大丈夫です」
私が淡々と答えると、了承した里菜は私達をリビングまで案内する。
深月はちょうど里菜の隣を歩き、談笑し始めた。私はその一歩後ろを歩く。
「いやーごめんね? ちょっと緊張してるだけだからあんまり気にしないで?」
「えーうちは平気だよ。来てくれるだけでも嬉しいしさ!」
私に聞こえるように言ってるのかそれは。
後ろ向きな考え方しか出来ないため、出来るだけ二人の会話は聞かないようにした。
数分ほど廊下を歩くと、突然広い場所に出る。
前を向くと、リビングにしてはありえない程広い空間が広がっていた。
天井に近い位置から床まで、南側の壁はほぼ窓。大量に光が注ぎ込む異様に明るい部屋だった。
唖然としていると、二人はさっさと奥の方に進んでいく。
奥にはバーカウンターが備え付けられた大きいシステムキッチンがあった。
「……すご……」
「ほんとすごいよねー! 私も三回くらい来てるけど全然慣れない!」
「えっ深月はもっと来てるじゃん!」
「嘘つくなよ……」
「でも慣れないんだって! 深鶴なら分かるでしょ!?」
キッチンに持参してきた2リットルペットボトル三本と、いくつかの袋菓子を置く。
よく見ると他にもたくさんのお菓子や飲み物、紙コップや割り箸なんかも置かれていた。
「もうこれで全員来てるの?」
「いや、あと……あーー! 彼待たせっぱなしだ!! ごめん二人とも、先に中庭出てて! みんないるから!」
そう言うと里菜は慌てて玄関へと走っていく。
何故か深月は微笑ましくその様子を見守っていた。
「……深月?」
「ん?」
「なんでそんなに笑ってんの?」
「いやあちょっとね」
ふふ、と奇妙な笑顔を浮かべながら、深月は私の手を取った。
ぽかんとしていると、深月は私の手をそっと引く。
「早く中庭行こうよ。皆待ってるだろうし」
「え、うん……」
入ってきた方向とは別の廊下へと誘導される。
少し天井の狭いそこを通る最中、後ろの方からまた里菜の声がした。