甘えたいお年頃。
その時間はまあまあ楽しかった。
人とはほとんど話さず、ただ皆が笑うのに合わせて笑うだけ。
突然、大きなバースデーケーキが登場したのには驚いた。大きいと言ってもまあ、普通のケーキより三周りくらい大きいだけなのだが。
至って普通に皆でバースデーソングを歌って、ケーキのど真ん中に刺さっている『17』の形をしたロウソクの火を里菜が吹き消した。
それと同時に、どこに用意してたのか、尊と呼ばれていた男がクラッカーを鳴らす。そこでまた皆がゲラゲラと笑った。
そして、いよいよプレゼント交換の時になった。
皆から貰ったものを、里菜はその場で開けていく。
反応は様々だが、そのたびに甘ったるい声でお礼を言っていた。
「次は深月ちゃんの番だよー」
「あのね、これは深鶴と一緒に選んだんだ! だから私からの分と深鶴からの分ってことで、はい!」
二人で選んだのは金平糖の詰まったクマのボトル。
プレゼントを受け取ったとき里菜は一度固まった。……が、すぐに表情を作って中身を開封し、
「ありがとう! 金平糖可愛いよね!」
「うん、私もこのクマの形してるの気に入ったんだ!」
深月に笑顔でお礼を言った。
ん? なんで一瞬固まったの?
私は彼女の顔色をうかがうが、今は特になんともない。
仕方なく、気のせいだと思い込んでやり過ごした。
「次は……尚人くんだね」
誰かがそう言った瞬間、周りにピリッと緊張が走った。
ほとんどの人が真剣に二人を見つめる。
里菜もまた少し緊張した面持ちでいた。
……尚人は相変わらずの無表情。
私にはわけがわからず、ただぽかんとしてその場を見ているしかなかった。
同級生にしては背の高い尚人は、里菜の前に立つと余計にそれが引き立つ。
「……ん」
「……あ、ありがとう……」
誕生日おめでとう、もなく突き出されたそれを里菜は受け取った。
中身は私の予想通り、あの店にあったマカロン型の入浴剤だ。
それを見た瞬間、里菜は今までになく嬉しそうな表情を浮かべた。
「ま、マカロン好きだってこと、覚えててくれたの……!?」
「……それが何」
「~~~~……ほ、本当に、ありがとう!!」
すると、里菜はプレゼントを持ったまま尚人に抱きつく。
え、と声を発しそうになったその瞬間、二人をはやし立てるような声や拍手が湧いた。
ナンダコレ。