戸惑う暇もないくらい
週末の土曜日。
世間では待ちにまった休みだけど接客業はそうもいかない。むしろ世間の休みが稼ぎ時だ。
ただし、シフト体制だと平日休みや半日休みが不規則に現れる。
今日は珍しく土曜日の半日シフトであり、15時には退勤できるのもあってやる気に満ちていた。
事務所で日誌を確認してパソコンのメールをチェックする。
連絡通りに「ジョワ・フルール」の成川さんから月末入荷予定の新作の在庫確保予定数が送られていた。
その数をチェックするとこっちの希望数が確保されていてほっとする。
その在庫表のデータを印刷してファイリングしていると事務所の扉が開いた。
「マネージャー、おはようございます」
「おはよう」
婦人肌着売場の責任者、井出(いで)マネージャーだった。
機嫌の良し悪しが分かりやすい人だったが今日はかなり疲れているように見える。
「マネージャー、お疲れですね」
「んー、最近会議多いから。時期が時期だしね…」
「そうですね、部長もなかなか捕まらないので承認が滞ることがあって大変です」
「そうね…」
ふーと長いため息を付いて席につくマネージャーに「体調気をつけてください」と声をかけて店頭に出ることにした。
マネージャーの疲れた様子に先日藤島さんに言われた婦人肌着内の異動の話が頭をちらつく。
考えても仕方がないと切り替えるように店頭に踏み出した。
挨拶回りをして担当スペースで在庫を確認したあと、ショーツが並ぶ陳列ケースの中の乱れた商品を見つけて取り出し、畳み直す。
まだ午前中というのもあってか店頭には人は疎らだった。
単調な作業の間に那智の今日の予定を思い返した。
今日はモデルの仕事は休みだと言っていた。
確かモデル業の合間にアルバイトしているカフェが夕方までだったはず。
早く帰ったら一緒にご飯作ろうかな、と珍しく料理をしたい気分になった。
今日中にやるべきことをもう一度頭の中に思い浮かべて帰るまでにしなければいけないことをリスト化する。
うん、今日は帰れるな。
予定を立てて効率よくこなせるよう仕事に取り組んだ。
順調にいけば残業なしで帰れるはずだった。
「ありがとうございました」
通路までお客様をお見送りしたあと、ちらりと腕時計を確認すると15時を回っている。
お昼を食べるタイミングを逃したあと接客に入った今のお客様がとても長い接客となった。
1時間をゆうに越える久しぶりのロングの接客は今月で一番の客単価となり、かなり疲れたもののその分の売上は大きかった。
やり遂げた充実感で事務所に戻り、同僚に確認をとって帰る準備を始めた。
「お疲れさま、長かったね。お昼まだじゃない?」
「はい、帰り何か食べます」
「半日いいなー、ごゆっくり」
「お先です。失礼します」
足早に事務所を出て従業員用通路に出た。
エレベーターホールで下りを待ちながら反対側からやってきた人影に視線を向けると、長い脚で歩いてきたのは藤島さんだった。
世間では待ちにまった休みだけど接客業はそうもいかない。むしろ世間の休みが稼ぎ時だ。
ただし、シフト体制だと平日休みや半日休みが不規則に現れる。
今日は珍しく土曜日の半日シフトであり、15時には退勤できるのもあってやる気に満ちていた。
事務所で日誌を確認してパソコンのメールをチェックする。
連絡通りに「ジョワ・フルール」の成川さんから月末入荷予定の新作の在庫確保予定数が送られていた。
その数をチェックするとこっちの希望数が確保されていてほっとする。
その在庫表のデータを印刷してファイリングしていると事務所の扉が開いた。
「マネージャー、おはようございます」
「おはよう」
婦人肌着売場の責任者、井出(いで)マネージャーだった。
機嫌の良し悪しが分かりやすい人だったが今日はかなり疲れているように見える。
「マネージャー、お疲れですね」
「んー、最近会議多いから。時期が時期だしね…」
「そうですね、部長もなかなか捕まらないので承認が滞ることがあって大変です」
「そうね…」
ふーと長いため息を付いて席につくマネージャーに「体調気をつけてください」と声をかけて店頭に出ることにした。
マネージャーの疲れた様子に先日藤島さんに言われた婦人肌着内の異動の話が頭をちらつく。
考えても仕方がないと切り替えるように店頭に踏み出した。
挨拶回りをして担当スペースで在庫を確認したあと、ショーツが並ぶ陳列ケースの中の乱れた商品を見つけて取り出し、畳み直す。
まだ午前中というのもあってか店頭には人は疎らだった。
単調な作業の間に那智の今日の予定を思い返した。
今日はモデルの仕事は休みだと言っていた。
確かモデル業の合間にアルバイトしているカフェが夕方までだったはず。
早く帰ったら一緒にご飯作ろうかな、と珍しく料理をしたい気分になった。
今日中にやるべきことをもう一度頭の中に思い浮かべて帰るまでにしなければいけないことをリスト化する。
うん、今日は帰れるな。
予定を立てて効率よくこなせるよう仕事に取り組んだ。
順調にいけば残業なしで帰れるはずだった。
「ありがとうございました」
通路までお客様をお見送りしたあと、ちらりと腕時計を確認すると15時を回っている。
お昼を食べるタイミングを逃したあと接客に入った今のお客様がとても長い接客となった。
1時間をゆうに越える久しぶりのロングの接客は今月で一番の客単価となり、かなり疲れたもののその分の売上は大きかった。
やり遂げた充実感で事務所に戻り、同僚に確認をとって帰る準備を始めた。
「お疲れさま、長かったね。お昼まだじゃない?」
「はい、帰り何か食べます」
「半日いいなー、ごゆっくり」
「お先です。失礼します」
足早に事務所を出て従業員用通路に出た。
エレベーターホールで下りを待ちながら反対側からやってきた人影に視線を向けると、長い脚で歩いてきたのは藤島さんだった。