戸惑う暇もないくらい
「お姉さんに見ていただいて良かったです。ルームウェアも欲しかったから嬉しい」
「こちらこそ、ありがとうございます」
会計を経て帰り際、通路まで歩いていると彼女は私を振り返ってにっこり笑った。
「えっと、お姉さんのお名前は…」
「広瀬と申します」
「広瀬さん。またお願いしますね」
「ありがとうございます。心よりお待ちしております」
笑顔で手を振って歩いていく彼女に腰からお辞儀をして見送った。
顔を上げて持ち場まで戻ると待ち構えていたように若菜が話しかけてきた。
「ね、今の一条あやめじゃない?」
「うん、そうだと思う」
「顔ちっさいしスタイルすごいね」
「肌も綺麗だしね」
「やっぱり一般人とは全然違うわー。一度でいいからあんなスタイルになってみたい」
若菜はため息混じりにそう言って離れていった。
あれだけ可愛くてスタイルが良くて、一店員にも気取らない。
今「彼女にしたい若手女優」に選出されるのも当然だ。
那智と並んだりなんかしたらそれはもう絵になるだろうなと簡単に想像できる。
彼女の手が那智の頬に触れるところまで想像して頭を振って現実に戻った。
自分の想像でダメージ受けるなんてバカみたい。
短いため息一つ吐き出して仕事に頭を切り替えた。
やはり新シリーズ含めてかなり今季のデザインは好調だ。
余裕があれば追加をかけられるか成川さんに相談しようと在庫数のチェックに取りかかった。
「ただいま」
残業もなく、早番で上がるとそのまますぐに帰宅した。
時間は18時半を回ったところ。
リビングには明かりも付いておらず、那智もまだ帰宅しついないようだった。
誰もいないリビングに入り、荷物を下ろしてソファに腰かけた。
ふと机に目を遣ると那智が表紙になっているメンズ雑誌が目に入る。
確か、もうすぐ発売のものだったか、那智が今度表紙になると言っていたのを思い出す。事務所から送られて来たものだ。
普段とはイメージが全然違う、鋭い目線を向ける那智の凛々しい顔。
くっきりした目鼻立ちにパーツの一つ一つが整った綺麗で男らしい造形。
那智の仕事が増えるのは嬉しい。
なのに心から喜んでいるかと聞かれたら即答できない。
どうして私はこんななんだろう。
自分に自信がないからなのか、芸能人にまで劣等感を抱くなんて。
しかもあんな感じの良い女の子に。
なんて嫌な女だろうと思うと知らず深いため息をついていた。
那智は、いつまでこんな私を好きでいてくれるんだろう。
そんな風に思うとどこか胸がチクチクする痛みに襲われた。
「こちらこそ、ありがとうございます」
会計を経て帰り際、通路まで歩いていると彼女は私を振り返ってにっこり笑った。
「えっと、お姉さんのお名前は…」
「広瀬と申します」
「広瀬さん。またお願いしますね」
「ありがとうございます。心よりお待ちしております」
笑顔で手を振って歩いていく彼女に腰からお辞儀をして見送った。
顔を上げて持ち場まで戻ると待ち構えていたように若菜が話しかけてきた。
「ね、今の一条あやめじゃない?」
「うん、そうだと思う」
「顔ちっさいしスタイルすごいね」
「肌も綺麗だしね」
「やっぱり一般人とは全然違うわー。一度でいいからあんなスタイルになってみたい」
若菜はため息混じりにそう言って離れていった。
あれだけ可愛くてスタイルが良くて、一店員にも気取らない。
今「彼女にしたい若手女優」に選出されるのも当然だ。
那智と並んだりなんかしたらそれはもう絵になるだろうなと簡単に想像できる。
彼女の手が那智の頬に触れるところまで想像して頭を振って現実に戻った。
自分の想像でダメージ受けるなんてバカみたい。
短いため息一つ吐き出して仕事に頭を切り替えた。
やはり新シリーズ含めてかなり今季のデザインは好調だ。
余裕があれば追加をかけられるか成川さんに相談しようと在庫数のチェックに取りかかった。
「ただいま」
残業もなく、早番で上がるとそのまますぐに帰宅した。
時間は18時半を回ったところ。
リビングには明かりも付いておらず、那智もまだ帰宅しついないようだった。
誰もいないリビングに入り、荷物を下ろしてソファに腰かけた。
ふと机に目を遣ると那智が表紙になっているメンズ雑誌が目に入る。
確か、もうすぐ発売のものだったか、那智が今度表紙になると言っていたのを思い出す。事務所から送られて来たものだ。
普段とはイメージが全然違う、鋭い目線を向ける那智の凛々しい顔。
くっきりした目鼻立ちにパーツの一つ一つが整った綺麗で男らしい造形。
那智の仕事が増えるのは嬉しい。
なのに心から喜んでいるかと聞かれたら即答できない。
どうして私はこんななんだろう。
自分に自信がないからなのか、芸能人にまで劣等感を抱くなんて。
しかもあんな感じの良い女の子に。
なんて嫌な女だろうと思うと知らず深いため息をついていた。
那智は、いつまでこんな私を好きでいてくれるんだろう。
そんな風に思うとどこか胸がチクチクする痛みに襲われた。