戸惑う暇もないくらい
家に帰ってから那智が居ないことを思い出した。
カレンダーを見ると「沖縄撮影」と今日から明日の日付にかけて書いてある。
久しぶりの一人の夜だった。
なんとなく、今日は那智の顔が見たかったのに。
異動のことで気弱になってる気がする。
今まで一人が当たり前だったのに。
一人でレトルトカレーを食べ、見たいわけでもないテレビをつける。
「思ったより美味しくないな」
美味しそうだと思っていつか買った人気レストランのレトルトカレーはたいして美味しくなかった。
「…那智のご飯がいい」
いつの間にこんなに贅沢になってしまったんだろう。
たった一日那智がいないだけでこんな気持ちになるなんて。
「那智…」
遠距離になったり別れることになったらどうしよう。
胸が重く沈んでいく。
その時、スマートフォンに着信を知らせる音が鳴った。
画面を確認するとそこには「那智」の名前。
「もしもし…」
『あ、はーちゃん?もう帰ってた?』
「うん。那智は撮影どう?」
『良い感じ。明日また日の出に撮る予定。こっちは暖かいよ~』
「そっか、良かった」
『…なんかあった?』
「…何もないよ」
唐突に告げれられた言葉にどきりとする。
否定するものの、那智はまるで私の顔を見ているように言った。
『ごめんね、明日すぐ仕事終わったら帰るからね』
「何もないって言ってるのに」
『俺には見えるんだよねー、はーちゃんの顔が。今眉毛下がってるよ』
「…下がってない」
『はいはい。帰ったらいっぱいぎゅーってしてあげるから』
いつもなら「何言ってんの」ってかわしてたけど。
なんとなく、不安に負けたのか素直に本音が口をついて出ていた。
「…早く帰ってきて」
口に出てから恥ずかしくなって赤面する。
那智がすぐに返事をしないのも相まってどんどん後悔が募った。
「や、やっぱり」
『葉月』
「っ!」
唐突に名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
『ずるい。今すぐ会いたくなるじゃん。もう帰ったらいっぱい可愛がるから』
「…うん」
『あーもーなんでこんな時にそんな素直なんだよー!可愛すぎてどうしよう』
「明日早いんでしょ。早く寝ないと」
『もうはーちゃんのせいで寝られない』
「何言ってんの」
那智は文句を言いつつも「すぐ帰るから」と念押しして電話を切った。
電話を終え、自分の口元が緩んでいるのに気付いた。
少し声を聞いただけなのに、もう気持ちが軽くなっている。
改めて那智の存在が自分にとってどれだけ大きいのかを気付かされたのだった。
カレンダーを見ると「沖縄撮影」と今日から明日の日付にかけて書いてある。
久しぶりの一人の夜だった。
なんとなく、今日は那智の顔が見たかったのに。
異動のことで気弱になってる気がする。
今まで一人が当たり前だったのに。
一人でレトルトカレーを食べ、見たいわけでもないテレビをつける。
「思ったより美味しくないな」
美味しそうだと思っていつか買った人気レストランのレトルトカレーはたいして美味しくなかった。
「…那智のご飯がいい」
いつの間にこんなに贅沢になってしまったんだろう。
たった一日那智がいないだけでこんな気持ちになるなんて。
「那智…」
遠距離になったり別れることになったらどうしよう。
胸が重く沈んでいく。
その時、スマートフォンに着信を知らせる音が鳴った。
画面を確認するとそこには「那智」の名前。
「もしもし…」
『あ、はーちゃん?もう帰ってた?』
「うん。那智は撮影どう?」
『良い感じ。明日また日の出に撮る予定。こっちは暖かいよ~』
「そっか、良かった」
『…なんかあった?』
「…何もないよ」
唐突に告げれられた言葉にどきりとする。
否定するものの、那智はまるで私の顔を見ているように言った。
『ごめんね、明日すぐ仕事終わったら帰るからね』
「何もないって言ってるのに」
『俺には見えるんだよねー、はーちゃんの顔が。今眉毛下がってるよ』
「…下がってない」
『はいはい。帰ったらいっぱいぎゅーってしてあげるから』
いつもなら「何言ってんの」ってかわしてたけど。
なんとなく、不安に負けたのか素直に本音が口をついて出ていた。
「…早く帰ってきて」
口に出てから恥ずかしくなって赤面する。
那智がすぐに返事をしないのも相まってどんどん後悔が募った。
「や、やっぱり」
『葉月』
「っ!」
唐突に名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
『ずるい。今すぐ会いたくなるじゃん。もう帰ったらいっぱい可愛がるから』
「…うん」
『あーもーなんでこんな時にそんな素直なんだよー!可愛すぎてどうしよう』
「明日早いんでしょ。早く寝ないと」
『もうはーちゃんのせいで寝られない』
「何言ってんの」
那智は文句を言いつつも「すぐ帰るから」と念押しして電話を切った。
電話を終え、自分の口元が緩んでいるのに気付いた。
少し声を聞いただけなのに、もう気持ちが軽くなっている。
改めて那智の存在が自分にとってどれだけ大きいのかを気付かされたのだった。