強引年下ピアニストと恋するカクテル。


「えー。颯太君に送ってもらえばいいじゃない」
「二人と逆方向だもの。今日はもっと二人でゆっくりするべきだよ」
私が二人にそう告げた途端、カランとグラスがカウンターに落ちる音がした。

「怜也?」

気付いたのは颯太くんで、落したままになっていた怜也の手と、紺碧色のカクテルが海のように広がっていく様子に驚いていた。

「ちょっと待てよ、おい」
また機嫌なわるくなったのか私は緊張して身構えた。
けれどどうやらそれは少し違った様子だ。
唖然として目を見開いているような、そんな様子。

「お前、俺に結婚するから結婚式来てくれって言ったよな」
「言ったよ。で、君が今日、忙しいスケジュールの中来てくれたじゃないか」
「お前、俺に当てたメールに結婚相手は紀本だって書いてたよな! だから慌てて俺、来たんだけど」
「うん。紀本さん。こちら、紀本美雪さんだろ」

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