強引年下ピアニストと恋するカクテル。

「蒼村怜也にとって私は記憶に残りもしない存在だったって思ってたんだけど」
「何それ、最悪すぎだろ。ってか何で俺だけフルネームなわけ?」

「……『蒼村怜也』っていうピアニストとして、見てるから、かな」
「つまり商品とか品物名みたいな存在って言いたいんだな!」
「あ、っと怜也くん」
「日本に帰って来なければ良かった」

震えながら立ち上がった怜也は、着替えも中途半端なまま、コートを持って飛び出していく。
「ちょっと待ってよ!」
追いかけようとした私の手を掴んだのは颯太くんとお姉ちゃんだった。
「色々誤解があったみたいだから一端落ちついて考えさせよう」
「でも」
「颯太くんのBARのパーティをぶち壊したてもいいの?」
お姉ちゃんの言葉に、力なくその場に座り込む。


「なんで私を覚えてるんだろ。お姉ちゃんみたいに綺麗な存在でもないし、技術だってないよ。怜也くんみたいに人を惹きつけるピアノなんて弾いたこともない」
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