強引年下ピアニストと恋するカクテル。
飛び出していった彼は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
私の知っている天使みたいな美しい一面ではなく、さっきまでの不機嫌そうな彼でもない。
「ピアノの発表会の時、一度話したことがある、と言っていた。その時に何かあったのかもしれないね」
「……怜也は、今日君に会えるのが楽しみだって言ってたんだ」
「信じられない」
「こんな狭いBARで弾くわけないと最初は断られたんだけど、最後は君が来るって分かってOKしてくれた」
すとんと力が抜けて私は帰ろうと思っていたはずだったのに、バーテンダーにもう一杯お願いしてしまった。
強ければ強いほどいい。私の震える体を大人しくさせるぐらい強いアルコールが欲しい。
二人は、私の様子を見て困ったように顔を見合わせた。
けれど空気を読んでくれたのか二人で話しだした。
作ってもらったオリジナルカクテルを見ながら胸が苦しくなる。